2007年11月24日

宮崎駿も歌詞を書くな

子供と一緒に、「となりのトトロ」のビデオを見ていたのです。いつ見てもいい作品ですね、とつくづく思います。子供の方はストーリーまで理解しているかどうかは分かりませんが。
で、内容はいいんですが。気になったことがあります。それは前から引っ掛かっていた主題歌のこと。

「トトロ」には、オープニング・エンディングそれぞれに主題歌がついています(こういう構成も好きな理由の一つです)。OPは「さんぽ」、EDは「となりのトトロ」というタイトル。

この2曲、作曲はどちらも久石譲ですが、作詞者が違います。「さんぽ」の方は中川李枝子、そして「となりのトトロ」は宮崎駿その人です。そしてこれが、かなりクオリティに差が…あります。

気取ったアヴァンタイトルもなくいきなりはじまるオープニングと主題歌。「あるこーあるこーわたしはーげんきー」。「ぐりとぐら」など数々の作品を書いた児童文学者である中川李枝子ならではの、わくわくする歌詞です。いいうたです。画面との相性も良い。

そしてあっというまに本編が終わり、余韻を残したままエンディングに突入。主題歌がかかりますが…、どうにもその歌詞が「説明調」なのですね。なんというか、それまでのストーリーのあらすじを順々に聞かされているというか。まあ見ている人は気分も高揚していて、歌詞などさほど気にしないであろう、という点で救われている気もしますが。
特に、何度か出てくる「あなた」という表現。「あなたに訪れる 不思議な出会い」。あなた、というのは恐らく画面の前の「わたしたち」のことですけど、こんな歌の呼びかけに使わんでほしい、ふさわしくない言葉だと思います。

原作脚本監督すべて宮崎駿だもんで、ついつい歌詞を書いたらこんなふうになっちゃったんでしょうか。どうもこの人はアニメの才能はあってもうたごころに欠けるような気がするので、できればでしゃばっていただきたくありません。

「さんぽ」(YouTube)
ED「となりのトトロ」もYouTubeにありましたが、エンディングなだけに思いっきりネタバレしているためここには貼りません。(すぐに探せると思います)

歌詞へのリンクです。
さんぽ
となりのトトロ

「トトロ」以前

それでは「となりのトトロ」以前の宮崎作品ではどうだったか。というと、ひとつ前の「天空の城ラピュタ」も主題歌は自作の詞です。これもなんとも説明調で、いいとは言えません。やはりエンディングの高揚に救われているような。

その前の「風の谷のナウシカ」。これが問題です。この映画にはうた付きの主題歌はありませんが、「シンボルテーマソング」なる曲が存在します。松本隆作詞、細野晴臣作曲、萩田光雄編曲という超一流作家の手によるものですが、肝心の安田成美のうたがあまりにもアレという代物。結局映画本編に使われることはなく「幻の主題歌」扱いされていますが、実はもう一曲「幻の主題歌候補」がありました。1984年の映画公開時に作られたムック「風の谷のナウシカロマンアルバム」に歌詞だけ掲載されていたもの。作者はもちろん宮崎駿本人。これがまた、「腐った海を越えて 風は来た」とか何とか、まあやっぱり詩心を感じさせない代物で、私はこの詞を読んで「ああこれが『幻』でよかった」と心から思ったものでした。それはそうと、ひょっとすると安田成美のあの歌のおかげで「もう主題歌もわしが書く!」と決意させてしまったのでしょうか…?

「トトロ」以後

「トトロ」以後の作品ではどうでしょうか。「魔女の宅急便」「紅の豚」は、それぞれユーミン、加藤登紀子という本職の方の曲なので監督の出る幕はなし。「もののけ姫」で、三たび宮崎監督自身が筆を取ることとなります。これも、悪くはないが良くもない。言葉がメロディーに乗っていません(よね?)。ただ、こちらの歌詞に使われている二人称「そなた」は、トトロの「あなた」と比べるとはまり具合はずいぶんましです。

その後の「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」では歌詞は他人に任せています。うん、これが正解ですよ。現在製作中の「崖の上のポニョ」はどうでしょうね。また「俺が書く」とか言ってないだろうか、心配です。

おまけ:なぜこの記事のタイトルが「宮崎駿『も』なのか」

は、以前「おもひでぽろぽろ」主題歌の歌詞を書いた(訳した)高畑勲にがっかりした経験がある(記事)からです。

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スタジオジブリ

徳間ジャパンコミュニケーションズ 1998-05-21

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「風の谷のナウシカ」から「もののけ姫」までのジブリ映画主題歌集。「On Your Mark」もあるよ。

(UPDATE)

B001F0G7KQ スタジオジブリの歌
アニメ主題歌
徳間ジャパンコミュニケーションズ 2008-11-26

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"STUDIO GHIBLI SONGS" のリリース以後に公開された作品の主題歌を追加した改訂版(?)が10年後の2008年に出ました。「崖の上のポニョ」までが収録され、2枚組になっています。タイトルはなぜか日本語に変わり、ジャケットはちょっと手抜き気味(笑)。

追記

「ポニョ」では、久々に宮崎自身が作詞だったんですね(知らんかった)。さて出来映えは。というわけでフォロー記事:

やってもうたんですね

posted by gyogyo6 at 23:29 | Comment(5) | TrackBack(0) | 音楽の周辺 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
批判するなら曲に触らないでほしい。私はあの人の詞が好きです。
Posted by かな at 2010年04月09日 03:04
かな さん:
コメントありがとうございます。とはいえ曲に触れずに曲や詞のことを書くのはなかなか難しいので、どうかご容赦いただきたいところです。
Posted by gyogyo6 at 2010年04月09日 18:34
詳しい知識はわかりませんが、『油屋』の歌詞が宮崎駿だと知ったとき衝撃でした。

批判する意味がわかりません。
Posted by 宮崎駿の詞が好きです。 at 2011年11月18日 15:29
コメントありがとうございます。
いいものはいいんですよ。でもね。…といったところです。
Posted by gyogyo6 at 2011年11月19日 00:09
まさに「やってもうた」ですね。
『世界一受けたい授業』で鈴木Pが宮崎パヤオの仕事を語ったとき
「あ、こりゃ後継者出来ないわけだw」と思ったな。セル画書いてる途中で内容どんどん変えちゃうのはどうよw
Posted by ブリ at 2013年08月05日 20:40
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